<概要>
本日は、西川研究室OBであり、昨年度お世話になった増田さんの授業を見学させていただきました。
場所は、魚沼市立堀之内中学校でした。
4限数学、5限理科の見学の後、増田さんと対話してきました。
<4限 数学 合同『学び合い』>
・問答の様子
授業が始まると、問答タイムがありました。
形式としては、授業で番が回ってきた班のメンバーが、先生に質問するというものでした。
質問は結構色々で、漫画やアニメの内容から理科に繋げて、理科の現象について質問していたり。
はたまた好きなアイスはなんですか?なんていう質問もあったり。
単純に質問に回答するというよりも、対話を通して増田さん自身のことが会話中に表出されてくるような印象でした。
また、質問している生徒側の意図や考えも開示される。
問答によって、両者の自己開示が行われている、という感じでした。
また、それらの質問内容を、意外と他の班の生徒(プリントや雑談をしている)も聞き耳を立てていたりしました。
そういう点で、それらの教師・生徒側の自己開示は学級で共有されることにもなりますね。
問答開始の時に、「何も考えてなーい」という声が出たりして、西川研っぽいな、というふうにも感じました。
質問することがなくなってから、捻り出すように出した質問が、意外と行き方を尋ねるものにつながっていたりするものですね。
・授業の進め方
合同授業なので、隣の学級と同じ内容なのですが、もう一方では別の先生が説明しているようでした。
増田さんのいる学級に対しての説明について。
そもそも、単元?を通して、学習するプリントは一括で渡してある模様。
「終わった人ー、もうすぐ終わりそうな人ー、まだの人ー
どうすればいいか、考えてやってくださいね。」
そんな声がけがされて、スタートしました。
そう言った声がけをしていた学級は2組。もう一方は1組で学習です。
しかし、授業が始まるとすぐに隣のクラスの生徒が混ざりにきて、一緒に始める。
最初から円になって話す人や、個人でやる人など色々でした。
・変化の始まり
結局、最初にグループになった子供たちは雑談を始めていました。
しかし、5分から10分したくらいに、そのうちの誰かが教科書を開いたり、ペンを持ってやり始めます。
そうすると、ゆったりと、グループ全体に伝播して、気づいた時には全員学習の話をしている、という状態に。
広かった円の形も、一つの机を囲むように小さくなって進め始めました。
1組の方でも、最初からグループで学習している子や、一人で学習する子、ペアでやる子など様々な形態が見られます。
・グループの様式
よく見てみると、男女入り混じったグループが多く生成されています。
また、時間経過によって、ペアで学習していた子達がグループに合流したり。
グループでやっていたのが断裂して、また戻ったり、本当に形は様々です。
ですが、結局時間経過によって、最初は雑談していたグループも、気づけばほとんどのグループがプリントに向かって、学習したり、終わった子たちは各々の課題や教科に向き合ったりしていました。
また、ワークを一人が持って、問題を出し合う姿もありました。
歴史の問題や、数学の問題も口頭で問題を出し、解き合うなんていう姿も見られ。
時間が経てば遊ぶ、ということはなく、むしろ時間経過によって学習の方に向かっていったような印象を受けました。
・増田さんの動き
基本的には、教卓のところの椅子や、空いた席に座って全体を眺めて。
時々生徒から話しかけられるので、他愛もない話をしたり。
授業中数回見回っていることはあれど、声がけなども特になかったと思います。
面白かったのは、数学の授業中の他愛もない話として。
中学生のペアが増田さんと話していることで、将来の仕事の話をしていたり。
お金の話が出ていたりして、面白かった。さらっと、「先生は〜」から始まる質問を繰り出されたりしていました。
・4限のざっくりとした振り返り
ここの授業や増田さんとの対話を通して。
増田さんの授業は、とても『自然体』なんだな、と思いました。
これは、宮島さんの授業を見学した時に感じたこととおそらく似ていると思います。
先生自身が、そもそも『自然体』。そして、生徒たちの姿も、非常に『自然体』なんです。
関わりたくなったら、関わる。
必要がなければ、関わらなかったり。
楽しいから、しゃべる。
でも、必要がある、授業だから勉強もする。
それらの裁量が、すべて子供たちに任されているからこそ、子供たちもストレスなく学習に取り組んでいる。
これ以降、より話題にあがりますが。
こういう『学び合い』を、『学び合い』ナチュラル、なんて書こうと思います。
<5限 理科>
今度は、2年生で理科の学習でした。
と言っても、単元内容はほとんど終わっているため、追加のプリント、という形で問題を出して、それぞれがやる、と言ったような形式の授業でした。
・今までの振り返りを行う
パワーポイントの資料を用いて、今までの学習内容の振り返りをしていました。
この話自体、7割くらい顔を上げて聞いている様子があり。
残り2割くらいは、すでに配られた問題を解き始める、という感じに。
そこも、統一するわけではない。
やりたいように、やる。そんな感じ。
まあ、全員が聞いている必要もないのかもしれません。
それをわかっている人がいて、聞けば教えてくれる状態だからこそ、です。
・『学び合い』授業見学から感じる雰囲気
『学び合い』の授業を、いろんな方々のものを見させてもらう中で。
雰囲気が、似ているもの、そうでないもの、というふうに分けられるような気がしていました。
今回を通して、それが結構はっきりしたような気がしていて。
その内容について、この授業を見ながら、ずーっと考えていました。
それについて、また後で記録しますが。
簡単に言えば、『学び合い』において、「ナチュラル」と「ミッション」のスタイルがある、と言えばいいのでしょうか。。。
・授業の雰囲気
熱心に内容を解こうとしてる人もいれば。全く手を動かさず、タブレットで旅行の予定について話しているグループもあったりで、本当に色々。
学習していない状態の生徒たち。その子達を、どう捉えているのか、というのも気になりました。対話の時に、お話を聞きました。
・授業レベルと生き方レベル
これについて、増田さんと少し話していました。
まぁ、生き方レベルって、よくわからんよね、と。
けれど、やっぱり上下ではないよねっていう話に。
西川先生の変容的に、授業レベルから生き方レベルに変容したから、「レベル」っていう言い方をしている、という解釈。
言い方、構成的な授業に比重を置いた『学び合い』と生き方に比重を置いた『学び合い』とかっていう名前だったら良いのにね、と言われて、確かに、と思いました。
名前から想像がつきにくいのですが、意味的に確かにそう言われたほうがわかりやすいなと思いました。
生き方レベル、、、
そもそも、教員が生きていくためには、授業が必要であって。
そこからは、逃げることはできない。
授業レベルの『学び合い』っていうなら、ストレートに受け取れば、授業で『学び合い』をするってことだ。
じゃあ、授業で生き方レベルって、、、?
考えるほど、よくわからなくなってきたりしている。
<増田さんと対話>
授業見学後に、増田さんと対話する時間がありました。
見学者3名と、増田さんで対話。
授業の振り返りや、『学び合い』のことなど、色々お話ししました。
特に印象に残ったものを記録したいと思います。
・自然体の授業だけど、、、
自然体の授業だったけれど、学習に取り組んでいない生徒たちのことをどう思っているのか、聞きました。
以前だったら、気にしていたけれど、今はそうではない。
その人を測るものは、何も学習だけではない。
そこで、瀬戸ツクルスクールやフリースクールなどにいって考えていたことを思い出しました。
学校という場で子供達を切り取って、評価すると。
結局学習だったり、体育的な側面でしか捉えることができない。
でも、この社会はもっと多く、複雑なものさしによって測られている。
だからこそ、学習していない、という様子をとっても、その人自身を測ることはできない、ということ。
確かに、これは自分の中にしっかり刻むべきことだなと思いました。
学校環境にいて、テストを繰り返したりする中で。
いや、それ以前に、小中高大と学校生活を送っていく中で。
学習というものさしだけで人を測ってしまう、測ってしまおうとする癖がついてきているようにも思います。
でも、実際私たちは他者と関わる時、そんな切り口だけで関わらない。
優しさ、コミュニケーション、生きていく賢さ、雰囲気、表情、
学習以外の、多様な条件をもとに人を判断する。
だからこそ、それを忘れず、学習だけが全てではない、というところもよく理解しておく必要があるなと思いました。
結局、だから学習も、点数だけを見てしまう。
そうではなく、学習指導要領でもあるように、どう生きる力につながるか。
そこを、考えなければいけない。
・コスパについて
『学び合い』をやっていく中で、構成的にしなくなったり、語らなくなったことについて話になりました。
結局、抑えるべきところが抑えられていたりして。
そうすることで、子供達の点数も、下がることはない。
問題が勃発するようなこともない。
学校内、外での立ち回りから、他教員からも信頼がある。
教科学習には、限界がある。
その枠組みの中で、必死にもがくか。それを諦め、ラインを見極めて全員が満足するラインにとどめるのか。
自分の生き方に合わせて、『学び合い』を行なっていくということについて、考えさせられました。
・増田さんの願い
学校教育や、子供たちと関わる上で、何か願っていることはありますか?と質問しました。
「死んでほしくない。生きていてほしい。ただそれだけ。」
本当に、これだけなんです。大切なのは。
自分にとっても、本当にそう思うことです。
確かに、幸せに生きてほしい、そういう社会になってほしいと願うけれど。
その大前提は、そこにある。
<授業を通しての『学び合い』の考察>
今回の授業見学を通して、『学び合い』について考えたことを書きたいと思います。これは、実際どうなのか、どちらが良いか、などの話ではないです。
・『学び合い』ナチュラル
今日、授業を見ていて。
生き方レベルや授業レベル、という話は置いておくとして。
授業で行われている『学び合い』の様式には、二種類のパターンがある、のではないか、と考えました。(本当に、実際はわかりません、私の感覚です。)
そのうちの一つ、名前をつけるとしたら、『学び合い」ナチュラルです。
名前の通り、授業者、生徒がそれぞれ、自然体の状態で授業を行うということです。
自然体、というのは、人間の本能的な、という感じ?です。
授業者も、何かに縛られたり、教材研究などを徹底する、という形ではなく。
その先生が本来持つ雰囲気や話し方、人との接し方をそのまま出す、という感じ。
それによって、子供たちも自然体な姿になって。
関わりたい人と、関わりたい時に、関わる。
したいことをする。
だから、雑談から入っていたのが、少し時間が経つと、学習し始めていく。
『学び合い』ナチュラルの良いところは、やはり両者にストレスがかからない、というところだと思います。
徹底的に、全員達成を目標にすることもない、一人も見捨てず!と強く言われることもない。
ただ、その人間がそう生きているから、それが反映されていく。
だから、授業中の声がけや価値付けなども、発生しない、という状態。
この状態では、集団の構造によって、授業への取り組み方が違うような気もします。
学習に真剣な集団や、人を巻き込んでみんなでやろう!という人がいる集団では、学習に向かう。
逆にそうではない、それらの発話が少ない集団だと、それぞれグループごとの活動になったり、学習は成立しない、という状態になったり。
けれど、これはこれで、子供達同士が話したり、つながっている時間にはなっている。
そんな感覚を、持ちます。
・『学び合い』ミッション
これは、もう一つのスタイルかなと思うものです。
簡単に言えば、集団に対して明確なミッションを与え、それに向かって集団が動いていくような声がけや、構成的な『学び合い』を行う場合です。
授業を通して、身につけさせたい力があったり、強い願いがあったり。
これは、オーソドックスな『学び合い』でもよくあることだと思いますし。
語りだったりがない場合でも、これに含まれることがあると思います。
どちらかというと、従来の教員が考えていることに近い、そんな気もします。
・二つのスタイルについて考える。
ナチュラルとミッションの二つについて考えた時に。違いがどこにあるのか、ということを考えました。
一つは、授業中の教員の行動かな、と思ったりしています。
教員が動き、見取り、伝えていく、授業をしていくというのがミッションスタイル。
教員は一応見ているけれど、生徒たちに全て任せている、というような授業が、ナチュラルスタイル。
もう一つは、授業に対する考え方。
授業において、願いを持ち、子供達にどうなってほしいかを考え、授業を「する」のがミッションスタイル。
授業自体は、自分自身の労働であり、自分自身の生きる術であると捉え、「いる」のがナチュラルスタイル。
んー、なぜかうまく言葉に表せないのですよね。
実際、いくつかの授業を比較してみて、分類できるような気もしたのですが。
いざ定義だったり、感覚を言語化しようとすると非常に難しい。
・スタイル融合型がいいなぁ。
そんな違いが、もし存在してるとしたら。
来月から教員として、自分が『学び合い』をする時に、どうするんだろうか、と。
結局は、自分の生き方とリンクする方を選ぶ、ということになるのだと思います。
でもなぁ、自然体でいたい。でも、願っている姿もある。
だから、それが融合するのが良いなぁ、って思って。
じゃあ、願っていることが、自分も実行できていれば。
それは、自然体であり、子供たちにも願えるのではないか、と。
スタイルの両立は、できるのではないか、と。
ありのまま、自分を出して授業したい。
でも、構成的にやって、子供たちの学習を成立させたい。
色々考えるけれど。
結局、自分の願いや夢は変わらずにあって。
「誰一人見捨てられない、みんなに繋がりがある社会」の形成者の一人になるために。
そして、それを自分でも実践しながら、自然体で関わって。
それで、子供たちにも、ミッションを与えて。
みんなで、考えて、成長していけたらいいなぁと思います。
結局、スタイルとか色々考えて、うまく言語化はできませんでした。
でも、やりたいこと、やってみたいことはたくさんあって。
その具体的な方法や雰囲気が見えてきているのだと思います。
今回も、非常に学びが多かったです。
増田さんをはじめ、堀之内中学校の皆様、ありがとうございました。